2016.11.15

卵巣がん診療ガイドラインがマインズで公開

161115ransou 卵巣がん診療ガイドラインが、Minds(マインズ)で公開されました。

 ・卵巣がん診療ガイドライン

 日本婦人科腫瘍学会は既に、卵巣がん診療ガイドラインを2004年版、2007年版、2010年版と公表していました。
 今回は2012年12月までに国内外で報告された文献やデータについてエビデンスとして収集・集積したものです。

 卵巣癌患者は増加傾向にあり、2007年には8631人、死亡者数は2011年に4705人に達しています。
 このように卵巣癌は女性性器悪性腫瘍の中で最も死亡者数の多い疾患とされています。

 シスプラチンの登場によって卵巣癌の治療成績は向上していますが、進行卵巣癌(Ⅲ、Ⅳ期)の5年生存率は20%台にとどまっており、予後不良です。

 卵巣がん診療ガイドラインの章としては、第1章ガイドライン総説、第2章卵巣癌、第3章上皮性境界悪性腫瘍、第4章再発卵巣癌、第5章腹膜癌・卵管癌、第6章胚細胞腫瘍、第7章性素間質性腫瘍、第8章資料集となっています。

 卵巣癌に関する医療過誤裁判例としては、婦人科医の診察を受けた患者が卵巣癌に起因する心不全で死亡したことについて、担当医師に経過観察義務違反があるとした東京地裁平成21年3月30日判決などがあります。

 福岡 古賀克重法律事務所 弁護士 古賀克重

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2016.11.09

ERCP後膵炎ガイドライン2015がマインズで公開 

 ERCP後膵炎ガイドライン2015が11月8日、Minds(マインズ)で公開されました。

 ・ERCP後膵炎ガイドライン2015

 厚生労働省難治性膵疾患調査研究班・日本膵臓学会が編集したものです。

 既に急性膵炎診療ガイドライン2015(第4版)が発行されており、ERCP後膵炎についても、第Ⅷ章「消化器内視鏡関連手技後の膵炎」としてまとめられていました。

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 今回のガイドラインは専門医を対象にして、ERCP後膵炎に限定してまとめたもの。

 臨床課題を1から10まで挙げて詳細に検討が加えられています。

 例えば臨床課題4「ERCP後膵炎の危険因子」では、「女性・膵炎の既往はERCP後膵炎の患者側危険因子として十分注意すべきである」(推奨度2・エビデンスB)と指摘されています。

 また臨床課題5「ERCPのインフォームドコンセントでは、「ERCP後膵炎の重症化による死亡について、事前に説明することは必須である」(推奨度1、エビデンスC)とされています。

 そして「本邦の報告では判例データベースからの検索で ERCP 関連の訴訟は9件あり(昭和60年~平成19年)、そのうち6例が重症膵炎を併発して死亡したもので、4例は医療者側の過失と認定され敗訴となった」と指摘しています。

 ERCP後膵炎とは、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)施行後より新たに急性膵炎の臨床徴候を呈し、膵酵素の上昇を伴うものと考えられていますが、統一された診断基準があるわけではありません。

 発生頻度は数%。軽症で数日で軽快しますが稀に重篤化することもあります。
 医療相談でも少なくないケースですから、医療機関としても十分なインフォームドコンセントが必要と思われます。

 裁判例としてはガイドラインが指摘している時期の後にも、ERCP後膵炎発症に対する重症度判定の遅れ等によって患者が死亡したとして損害賠償を求めたケースについて、約2324万円の損害賠償を認めた大阪地裁平成27年2月24日判決などがあります。

 福岡 古賀克重法律事務所 弁護士 古賀克重

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2016.10.27

九州肝臓友の会が「医療講演会~肝臓病の治療の現状」を開催

 九州肝臓友の会による恒例の医療講演会が11月20日に開催されます。

 九州肝臓友の会は福岡・佐賀など北部九州にお住まいの患者さんによる患者会。設立35年を迎え地道な活動を継続しています。

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 例えば、九州肝臓友の会の方は、薬害C型肝炎訴訟が福岡地裁で佳境を迎えている頃には、毎回傍聴支援にも駆けつけて頂きました。

 その九州肝臓友の会の恒例行事が専門医による医療講演会です。

 また私自身、薬害肝炎九州弁護団の事務局長として、九州肝臓友の会の医療講演会には何度も出席して、肝炎の医学的知見を学ぶ機会になりました。

 昨年は福岡大学医学部の向坂彰太郎教授の講演「B型・C型肝炎の最新治療」でしたが、今年は、産業医科大学第3内科学教授の原田大教授による講演「肝臓病の治療の現状」が行われます。

 毎回の講演後、活発な質疑応答も行われますので、患者・御家族にとってはまたとない機会になると思います。

 産業医科大学第3内科学教授の原田大氏による講演
   「肝臓病の治療の現状」

 11月20日(日) 午前11時~午後5時
  あいれふ10階 (福岡市中央区舞鶴2丁目)

  定員 先着120名    
 参加費 無料
 主催  九州肝臓友の会

 福岡 古賀克重法律事務所 弁護士 古賀克重

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2016.10.26

化血研の事業の今後についての緊急要望書を提出、薬害エイズ原告団が厚生労働大臣に

 東京HIV訴訟原告団・大阪HIV訴訟原告団が10月21日、厚生労働大臣に対して「化血研の事業の今後についての緊急要望」を提出しました。

 厚生労働省が化血研の事業譲渡を求めていますが、一方において化血研は経営陣を刷新した後、事業継続を求めるなど混乱しています。

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 これに対して、厚生労働省と化血研はいずれも薬害エイズ事件の被告であることから、被害者である原告団に対する情報開示などを求めるものです。

 具体的には、両原告団は、「化血研の事業の将来について、厚生労働省として何らかの見解・計画があるのであれば、まず原告団に周知のうえ、協議の場を設けられたい」、「化血研の事業が適切に進められるべく、原告団の意見をも聴取しつつ、厚生労働省として調整に当たられたい」という2点を求めています。

 そもそも血漿分画製剤をふくむ血液製剤、さらには血液事業の問題については、薬害HIV事件発生の主要因として、原告団が非常に強い関心を持ってきた。平成13年の「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」制定の際にも、われわれは強く働きかけを行い、その後も薬事・食品衛生審議会血液事業部会運営委員会の委員として積極的に発言、関与してきたところである。

 化血研の事業は、特に血漿分画製剤の開発、製造、販売において、日本の血液事業の大原則である献血による血液の国内自給達成に向け、極めて大きな役割を担っている。原告団としては、それが今後いかなる事業体のもと、いかなる血液事業への意識で行われるかを注視しているところである。

 化血研の事業の将来については、密室での指示、規定ではなく、第一に原告団と対応を協議し、そのもとに関係者の意見も踏まえ、厚生労働省が調整役となり、血液事業をはじめ様々な国策にかなうような形での解決を強く望むものである。

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2016.10.24

シリンジポンプの薬剤量等の設定間違いが3例、医療安全情報119号

 公益財団法人日本医療機能評価機構が、「医療安全情報」119号・2016年10月号を公表しました。

 薬剤量や溶液量などを入力すると流量が自動で換算されるシリンジポンプの設定を間違えたため、誤った流量で薬剤を投与した事例が3件報告されています(集計期間:2013年1月1日~2016年8月31日)。

 第12回報告書「個別のテーマの検討状況」でも取り上げられた内容になります。

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 1つ目の事例は、シリンジポンプでプロポフォールを投与する際、薬剤量「10mg」、溶液量「1mL」と設定しようとしたところ、薬剤量を「1mg」と誤って入力したというものです。
 その結果、実際の10分の1の濃度に設定され、投与予定の10倍もの流量で投与してしまいました。なお投与開始3分後、シリンジポンプの設定の誤りに気づき投与を中止しています。

 2つ目の事例は、医師が、アルチバを溶解しシリンジポンプにセット後、体重「60kg」、薬剤量「0.1mg」、溶液量「1mL」、投与量「0.5μg/kg/min」と設定したつもりでした。
 ところが、投与開始直後に血圧が低下したため、溶液量を「5mL」と誤って入力していたことに気付いたというものです。その結果、実際の5分の1の濃度に設定され、投与予定の5倍もの流量で投与してしまいました。

 当該医療機関の再発防止の取り組みとしては、シリンジポンプに設定した薬剤量や溶液量を投与開始直前に確認することが指摘されています。

 例えば、前述の2つ目の事例では、医師が表示された流量を投与前に確認していなかったようです。

 各薬剤の添付文書や基本書でも、看護・介護のポイントとして「シリンジポンプの取扱には日頃より習熟しておく」等の指摘がされています。

 換算された流量が正しいか確認するという極めて基本的なことが守られれば回避できるヒヤリハット事案といえそうです。

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2016.10.12

統合失調症薬物治療ガイドラインがマインズで公開

 統合失調症薬物治療ガイドラインがMinds(マインズ)で公開されました。
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  ・「統合失調症薬物治療ガイドライン

 日本神経精神薬理学会が作成していたものですが、今回改訂されたものです。
 改訂のポイントしては、各章の前文をわかりやすい表現に修正したこと、引用文献番号の整合性を修正したことなどです。

 本ガイドラインは、統合失調症の診断がはっきりしている患者に対して、薬物治療の選択基準を示したもの。統合失調症の治療として薬物療法だけで進めることを示しているものではありません。
 統合失調症の治療としては、薬物療法と心理社会的療法の組み合わせが大前提となるとされていることには留意が必要です。

 また統合失調症の患者の状態は様々ですから、多様性を平均してまとめたのがこのガイドラインということになります。

 序章で面白かったのは、ガイドライン作成者の利益相反情報について、個人毎に関係する製薬会社名まで開示している点です。他のガイドラインではここまできちんと情報開示している例はまだまだ少ないでしょう。

 全体の章としては、「第1章 初発精神病性障害」「第2章 再発・再燃時」「第3章 維持治療」「第4章 治療抵抗性」「第5章 その他」という構成になっています。

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2016.10.03

医療事故情報第46回報告書が公表、腫瘍用薬に関連した医療事故を分析

 日本医療機能評価機構が2016年9月29日、医療事故情報収集等事業第46回報告書を公表しました。
 
 報告書の対象期間は2016年4月から6月。
 医療事故の概要としては、「療養上の世話」が292件(35.9%)、「治療・処置」が261件(32.1%)、「薬剤」が58件(7.1%)、「ドレーン、チューブ」が53件(6.5%)、「検査」が36件(4.4%)と続きます。療養上の世話が従来から多いのですが、治療・処置の割合も増加傾向にあるようです。

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 事故の程度としては、「死亡」が65件(8%)、「障害残存の可能性がある(高い)」が88件(10.8%)、「障害残存の可能性がある(低い)」が225件(27.7%)。

 医療事故の当事者職種としては、医師490件、看護師436件となっています。なお当事者とは、医療機関が医療事故に関係したと判断した者をいいます。

 一方ヒヤリ・ハット事例の報告件数は、4月3758件、5月1500件、6月1535件に達しました。
 ヒヤリ・ハットの当事者職種としては、看護師5986件、医師360件、薬剤師330件、助産師139件、臨床検査技師113件になっています。

 個別のテーマとしては「腫瘍用薬に関連した事例」「レジメン登録、治療計画、処方の事例」が取り上げられています。

 腫瘍用薬に関して2010年1月から2016年6月まで250件を分析。
 その結果、「薬剤の血管外漏出・血管炎」が最も多く73件、「腫瘍用薬投与中の状態の悪化(副作用等)」が57件、「薬剤量間違い・過剰」が37件となっています。

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2016.09.23

ワーファリンの代わりにラシックスなど外観の類似した薬剤の取り違えが4例、医療安全情報118号

 公益財団法人日本医療機能評価機構が、「医療安全情報」118号・2016年9月号を公表しました。

 今回は、アンプルや包装の色が類似していたことが薬剤取り違えの一つの要因となり、患者に誤った薬剤を投与した事例が4件報告されています。

 第45回報告書の「個別のテーマの検討状況」でも取り上げられた内容になります。

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 1つ目の事例は、医師が薬剤の色の思い込みによって違う薬剤を投与したケースです。

 手術中、患者が吐き気・気分不快感を訴えたため、術者の医師が「プリンペランiv」と口頭で指示を出します。その際、看護師が他の処置を行っていたため、別の医師が、「プリンペラン=茶色のアンプル」という自分の認識のまま、茶色の薬剤を取り出し、投与してしまいました。その後、患者の血圧は60~80mmHg台となったため、エフェドリンを投与するに至りました。
 手術終了後、看護師が確認したところ、プリンペランの空アンプルでなく、使用していないはずのペルジピンの空アンプルがあったため発覚したものです。

 2つ目の事例は、薬剤師が包装の色で薬剤を誤ったというケースです。

 外来受診し、保険薬局で内服薬を受け取って帰宅した患者が、受診後より食欲不振、倦怠感が強くなり、歩行困難となってしまいました。2日後、症状改善せず入院せざるを得ませんでしたが、入院後、「ワーファリン錠1mg3錠 1日1回夕食後」の薬袋に、ラシックス錠40mgが入っていることが発覚しました。
 薬剤師は、調剤の際、同じ棚の赤いPTP包装を見てワーファリン錠だと思い込み、鑑査でも間違いに気付かないまま患者に渡していたものです。

 ワーファリンは経口抗凝固剤で血栓塞栓症の治療に使用しますが、ラシックスは利尿降圧剤で高血圧症・うっ血性心不全などに使用するものです。

 薬剤を取り違えた背景・要因としては、アンプルや包装の色が類似していたというもの。いずれも、薬剤名を確認していなかったために発生しています。

 総合評価部会は「アンプルや包装の色が類似した薬剤が存在することを認識すること」、そして「アンプルや包装の色で判断せず、薬剤を手に取った際に薬剤名を確認する手順を決め、遵守すること」を提言しています。

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2016.09.16

しわ取り注射で1300万円請求、60歳以上の女性の美容医療被害が急増中

 しわ取り注射数本で1000万円の請求・・・そんな被害相談が国民生活センターに多数寄せられています。

 「美容医療」とは、医師による医療のうち、専ら美容の向上を目的として行われる医療サービスを指し、医療脱毛・脂肪吸引・豊胸手術・二重まぶた手術・包茎手術・審美歯科等になります。

 国民生活センターが、過去5年間で900件の相談が寄せられていることを公表しました。
 60歳以上の相談件数は2014年度がピークですが、契約金額は年々高額化しています。例えば、2015年度の美容医療の平均額は70万8428円ですが、60歳以上に限ると126万8023円と1.8倍に達しています。

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 美容医療は健康保険ではなくて自由診療ですから、各クリニックで料金が異なること、WEBサイトなどで誇大広告が横行していることなどが背景にあります。

 最近は医療の法律相談でも美容医療に関するものが増えており、事前の説明が不十分であった、早急な施術を迫られた、費用が高額だった等に分類されます。
 ここまで来ると高齢者に対する詐欺被害に近いといえ、他の訪問販売と同様に周りの家族が注意するだけでは限界があり、何らかの規制も検討が必要でしょう。

 そのため医療問題を取り扱う弁護士だけでなく、消費者関係の弁護士も被害救済に乗り出しています。

 国民生活センターは「60歳以上の消費者トラブル110番」として、9月16日午前10時から午後4時まで相談を受け付けています(電話番号03-5793-4110)。

 顔のしわを取るなどの美容医療をめぐり高額な請求をされたなどといった、60歳以上の女性からの相談が、この5年間におよそ900件寄せられ、中には数本の注射でおよそ1300万円を請求されたケースもあるとして、国民生活センターが注意を呼びかけています。

 相談内容としては、カウンセリングを受けるつもりだったのに、十分な説明もないまま、その日のうちに顔のしわを取るための注射を数本打たれ、およそ1300万円を請求されたケースや、「今すぐに契約するつもりはない」と言っても、1時間以上にわたって勧誘され、断り切れずに注射をされたケースなどがあるということです。
 また、注射を打たれておよそ800万円を支払ったあとに相談してきたケースもあったということです(9月15日付けNHK)

 福岡 古賀克重法律事務所 弁護士 古賀克重

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2016.09.09

厚労省が化血研に抜き打ち検査、化血研が存続希望伝えた直後に

 厚生労働省が9月7日、化血研に立ち入り検査を行いました。

 化血研は不正製造を隠蔽し、2016年1月に医薬品医療機器法に基づく過去最長110日間の業務停止処分を受けていました。

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 今回の立入検査は、今年1月から厚労省が製薬会社36事業所に対して実施することにした抜き打ち検査の一環。
 ちなみに2017年度予算の概算要求でも4億4000万円が要求されたほか、担当職員も50人から12名増やすことになっています。

 ただタイミング的には、先日、化血研が存続を希望したこととも関係してそうです。

 化血研は厚労省の強い意向を受けて、アステラス製薬との間で事業譲渡交渉を続けてきました。ところが、最近になって厚労省に対して化血研として存続したいという要望を伝え、それに対して厚労省が難色を示しています。

 関係者によると、化血研は事業譲渡について、「交渉先が厚労省に指定され譲渡価格などで公正な交渉ができない」「患者が少ない製剤やテロに備えた天然痘ワクチンなど公共性の高い製剤供給が続く保証はない」などと疑問視。アステラス、厚労省の担当者が集まった場で5日、「現在の状況下では譲渡は難しい」とし存続を検討する考えを伝えた。

 厚労省には製薬企業の合併などを命じる法的権限はないが、同省幹部がその場で事業譲渡を化血研に改めて求めたという(9月6日付け朝日新聞)。

 アステラス製薬は、2005年に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併した業界第3位の会社。化血研の売上高475億円(2014年度)に対してアステラスの売上高は6359億円(連結だと1兆1399億円)に達しています。

 化血研は6月に全理事が退任して、新理事長に近畿大薬学総合研究所長の早川尭夫氏が就任したばかり。
 体制を刷新したばかりの新経営陣が譲渡を回避して存続を希望する姿勢に違和感を感じます。

 隠蔽していた問題の悪質さと根深さを考えると、厚労省の進める再編の方が国民の理解を得られることは確かでしょう。

 塩崎厚生労働大臣も9日の閣議後会見において、「40年にわたって薬事制度の根幹を揺るがす極めて悪質な行為を続けてきたわけで、製造販売許可の取り消しに相当する」、「厚労省としても化血研に対する指導をきっちりと継続していく」と厳しく指摘しています。

(記者)
 化血研(一般財団法人化学及血清療法研究所)についておうかがいします。血液製剤の不正製造を受けて、他企業への事業譲渡の交渉を進めておりました化血研側に事業の存続を希望する意向があるということが明らかになりました。これについての大臣のお考えをお願いいたします。

(大臣)
 化血研が自ら何をして、このような事態になっているかをもう一度胸に手をあてて考えていただいた方がいいのではないかと思います。40年にわたって薬事制度の根幹を揺るがす極めて悪質な行為を続けてきたわけでありまして、製造販売業許可の取消に相当するということは冒頭からも言ってきたことであります。これまで化血研としての医薬品製造販売業の継続を前提としない、体制の抜本的な見直しを当初から、1月からずっと求めて、事業譲渡を行うように指導してまいりました。したがって、こういう考え方をもう一度思い出していただいて、そのとおりやっていただくことが大事だろうと思いますので、私どもも化血研に対する指導をきっちりと継続してまいりたいと思います(9月9日閣議後会見)。

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2016.09.06

平成29年度概算要求は過去最大、肝炎対策は職域検査の取組が新たに計上

 厚生労働省が8月26日、平成29年度(2017年度)の概算要求を公表しました。

 概算要求額は31兆1217億円、2016年度予算から2・7%増えています。内閣府に移管した保育関連予算を合わせると過去最大規模の予算です。待機児童対策では保育所などの受け皿整備として712億円を計上しています。

 ちなみに全省庁の概算要求の総額(一般会計)は、101兆4707億円と2016年度の当初予算よりも4・9%増加です。
 要求額が最も大きかったのが厚労省ということになります(法務省は7731億円、環境省4212億円、警察庁3333億円、防衛省5兆1685億円など)。

 厚労省の平成29年度概算要求のうち肝炎対策は179億円(昨年度・平成28年度予算186億円)。
 平成28年度の概算要求222億円よりも減少しています。

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 ▲ 早期発見・早期治療を促進するための環境整備
 早期発見・早期治療を促進するための環境整備としては139億円(昨年度予算150億円)が計上されています。

 これは、肝炎患者の早期発見・早期治療を促進するため、肝炎に対する正しい知識の普及啓発、肝炎ウイルス検査、肝炎患者への医療費の助成及び医療提供体制の確保等を推進するための項目。
 特に、肝炎ウイルス検査で陽性と判定されながら医療機関を受診しない患者が少なからずみられることから、適切な受診して治療してもらうための方策を進めるものです。

 この項目の中には、「肝炎ウイルス陽性者のフォローアップによる重症化予防の推進 31億円(昨年度予算18億円)」と「ウイルス性肝炎に係る医療の推進 71億円(昨年度予算104億円)」、「肝疾患診療地域連携体制の強化 6・2億円(昨年度予算6・2億円)」も含まれています。

 新規として、「職域検査への取組の推進」(8・7億円)が計上されました。
 これは職域における肝炎ウイルス検査の実施の促進のため、検診機関及び事業者等との連携が図られるよう、都道府県等に対して必要な支援を行うものです。

 ▲ 肝炎治療研究などの強化
 肝炎治療研究などの強化としては40億円(昨年度予算37億円)が計上されています。

 今年度、中間見直しが行われる「肝炎研究 10 カ年戦略」の方向性を踏まえ、B型肝炎の画期的な新規治療薬の開発を目指した創薬研究や肝硬変の病態解明と新規治療法の開発を目指した研究等を推進するものです。

 ▲ 肝炎対策以外
 肝炎対策以外としては、新規として、「化血研事案を踏まえた医薬品等の安全・信頼性の確保」(4・4億円)が計上されています。

 化血研事案のような組織的隠蔽による不正行為を発見するため、国内製造所への抜き打ちによる立入検査及び海外製造所への立入検査が効果的に実施できるように、GMP査察体制の抜本的強化を図るものです。

 またハンセン病対策の推進として375億円(昨年度予算362億円)が計上されました。

 これは偏見・差別の解消に向けて、ハンセン病問題に関する正しい知識の一層の普及啓発等を進めるため、国立ハンセン病資料館等の学芸員を増員するとともに、収蔵庫を新たに整備し、資料館活動の充実を図ることも含まれています。

 福岡 古賀克重法律事務所 弁護士 古賀克重

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2016.09.01

日本医療機能評価機構が平成27年年報を公表、訪問調査で得られた知見も

 日本医療機能評価機構が2016年8月29日、医療事故情報収集等事業の平成27年度年報を公表しました。

 年報は平成17年度より公表されているもので、この平成27年度年報で11年目になります。
 平成27年1月から12月までに1426医療機関から報告を受けた3654件について分析したものです。

  ・「平成27年度年報

 ヒヤリ・ハット事例の1年分の集計、個別テーマの分析、共有すべき医療事故情報の概要がまとめられています。
 例えば個別のテーマ分析としては、「インスリンに関連した医療事故」144頁、「手術中の砕石位に関連した事例」149頁が取り上げられています。

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 前回の平成26年度年報は600頁もの情報量になっていましたが、かえって分かりにくいという反省から今回は210頁とコンパクトになりました。
 そのため「個別のテーマの検討状況」や「再発・類似事例の発生状況」は概要としてまとめられ見やすくなっています。

 また医療事故情報を報告した9医療機関に対しては訪問調査を行っています。訪問して得られた知見、訪問での主な意見も含めて、その概要も分かりやすくまとめています(114頁以下)。

 訪問調査した事案は、「MRI検査の造影剤を投与する際、注射器に薬剤名等の記載のない薬剤を投与したところ、鎮静剤を誤って投与した事例」「血液製剤の依頼を受けた際、画面に表示された同姓類似名の違う患者の血液製剤を払い出した事例」「右膝の手術の際、誤って左膝用の手術室の準備を行ったが、タイムアウトでも気付かず、左右を取り違えて手術した事例」「中心静脈カテーテルのヘパリンロックを行う際、座位で誤った接続部位を外したため、血管内に空気が混入した可能性がある事例」などです。

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2016.08.24

肝炎研究10カ年戦略の中間見直し、C型慢性肝炎のSVR率95~100%など数値目標を設定へ

 肝炎治療戦略会議(座長:林紀夫関西労災病院院長)が8月22日、開催され、肝炎研究10カ年戦略の中間見直しについて議論されました。

 肝炎研究10カ年戦略とは、平成24年度からの10年間の戦略目標の達成を目指し、重点課題について集中的に研究を進めていくもの。

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 今回の議論は、現在の進捗状況を評価して、戦略の見直しを行うものです。
 中間見直しを経て、平成33年度には目標の達成状況を評価して必要な措置を講ずることになっています。

 22日の戦略会議では、肝疾患の治療成績の数値目標を上げる中間見直し案が示され、方向性について了承されました。
 今後、厚労省は9月から10月にかけて中間見直しに関するパブリックコメントの募集を行うことになります。

 具体的な戦略の目標のうち、C型肝炎に関する数値は下記の通りです。

C型慢性肝炎、代償性肝硬変におけるSVR率を現状の約90%以上から約95~100%まで改善

非代償性肝硬変(Child-Pugh C)における50%生存期間を現状の約18ヶ月から約24ヶ月まで改善

肝硬変からの肝発がん率をC型肝硬変では現状の年率約5~8%から3~5%まで改善

 またB型肝炎に関する数値目標は下記の通りです。

抗ウイルス療法による5年後のB型肝炎のHBs抗原陰性化率を、現状の約6%から約8%まで改善

肝硬変からの肝発がん率を、B型肝硬変では現状の年率約3%から約2%まで改善

 以上の数値目標を達成するために、C型肝炎の臨床研究としては、「薬剤耐性ウイルスに効果のある治療法を開発する」、B型肝炎の臨床研究としては、「新規治療薬を開発し、臨床試験に導入する」とされています。

 福岡 古賀克重法律事務所 弁護士 古賀克重

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2016.08.23

前医療機関からの食種情報の確認不足による医療事故が3例、医療安全情報117号

 公益財団法人日本医療機能評価機構が、「医療安全情報」117号・2016年8月号を公表しました。

 今回は、他施設からの食種の情報を確認しなかったため、患者に適さない食事を提供した事例が3例報告されています。

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 第26回報告書の「個別のテーマの検討状況」で取り上げた内容になります。

 1つ目の事例は、医師が入院時の食事を指示する際、診療情報提供書に記載された食種を確認しないまま、「常食」と入力してしまったケースです。看護師も患者の咀嚼・嚥下状態を観察しませんでした。
 そのため15分後、患者がむせて、SpO2は80%に低下。その後、米飯を大量に吸引してSpO297%に改善しましたが、その後、看護師が転入前の食種を確認すると、前医では「全粥・粗刻み食」を提供していたことが分かったというものです。

 2つ目の事例は、医師が入院時の食事を指示する際、前施設からの食種に関する情報がなかったため、とりあえず「常食」をオーダ。看護師が夕食のセッティングをして、食事の摂取を3口ほど見守り退室しました。その後、食事摂取状況の確認のため訪室すると、患者がベッド上でぐったりしており、呼名に反応せず、口腔内にはミカンや米飯などが多量にあったというものです。
 実は、入院時に患者が持参した看護サマリには「全粥・軟菜・刻み食」と記載されていたにもかかわらず、看護師が確認していなかったものでした。

 いずれも医師ないし看護師が慎重に対応し、他施設からの診療情報提供書や看護サマリーの確認を徹底していれば避けられた事案です。

 2つの事例は幸いに患者の体調は回復したようですが、死亡等の重大な結果になっていれば、注意義務違反のそしりは免れなかったでしょう。
 高齢者や入院患者の誤嚥による医療事故は、医療機関の責任が認められることも少なくありませんから、基本に戻り徹底した確認が求められています。

 福岡 古賀克重法律事務所 弁護士 古賀克重

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2016.08.10

医療機関のHPを規制へ、美容医療トラブルをうけ厚生労働省が方針

 厚生労働省が美容医療に限らず全ての医療機関のホームページにおける虚偽、誇大な表現を規制する新たなガイドラインを作成する方針を決めました。
 
 ガイドラインでは、虚偽や誇大な表現、不適切な表示の掲載を禁止する予定です。医療法を改正し、違反した場合には罰則を設けることも視野に入っています。

 今回の方針は「美容医療」を巡るトラブルが相次いでいることが背景にあります。

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 国民生活センターのPIO-NETに寄せられた美容医療サービスに関する相談は、2011年の1559件から2013年には2156件、2014年には2622件に達しています。
 そのうち広告に問題のありそうな相談は、2013年1195件、2014年1479件になっています。

 そもそも「HPは利用者が自ら検索して閲覧するため、医療法上の広告ではない」という理屈でこれまで規制してこなかったこと自体が問題でしょう。

 非常に法律相談も多い分野ですが、費用対効果から弁護士に依頼できずに泣き寝入りする相談者も少なくありません。
 また弁護士に依頼しても、なかなかカルテ開示に応じないことも経験しましたし、複数のカルテが発覚するなど偽造が疑われるケースもありました。
 さらに訴訟に至っても、細かな点から争い、なかなか早期には解決に結びつかないこともあります。

 被害に合わないように医療ホームページの規制が不可欠と思っていましたので妥当で方針でしょう。
 一方美容医療の利用者も飛びつかないように慎重に意思決定していくことが逆に求められることになります。

 美容医療サービスに関する相談(国民生活センター)

 包茎手術について説明を受けたが、十分に考える時間を与えられず承諾させられてしまい、手術を受けた。不要な施術があったので一部返金を望む。

 クレジット会社から督促通知が来て、20代の学生の娘が美容クリニックで130万円もの高額な顔のたるみ手術を受けたことが分かった。学生に契約させるなど、納得いかない。

 インターネットの広告をきっかけに、美容クリニックの植毛の無料カウンセリングに行った。アドバイザーの女性から、「今日、今週末のキャンセルが出た。今契約すれば料金が安くなる」と4時間以上も勧誘され契約した。契約書面にはキャンセル料が10万円かかると書いてあるのに、アドバイザーは「格安なのでキャンセルできない」と言う。解約したい。

 美容外科で、「約300万円が半額になる」と値引きを強調して勧誘され、リフトアップやしみ取りの契約をした。しかし、高額なので未施術分を解約したい。

 エステ店から紹介された美容外科で、全身脱毛の契約を50万円でした。一切解約しないと記載がある同意書にサインをしたが、高額で支払うことが難しく、施術前なので解約したい。

 福岡 古賀克重法律事務所 弁護士 古賀克重

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«群馬大学病院が患者18名死亡について調査報告書、「患者中心の医療から乖離」と指摘