裁判員制度が来年平成21年5月21日から開始することが決定しました。同日以降に起訴された重大事件が対象になります。来年7月以降には皆さんにも呼び出し状が届く可能性があります。
個人的には裁判員制度は日本の司法を大きく変えるきっかけになると期待しています。「弁護士はなんて弁論が下手なんだ」、「検察官はなんて一本調子なんだ」、「裁判官はなんて杓子定規なんだ」「結局、裁判なんて常識で、法律家でなくても大丈夫なんだ」・・・裁判員に参加した方には司法の敷居が一気に低くなると思います。そして裁判員参加者からの司法に対する不満や要求が、司法全体をさらに健全化していくことでしょう。
そうはいっても色々な意味で負担になる方々もおられます。そこで裁判員法が辞退事由を定めるだけではなく、平成20年1月17日には裁判員を辞退できる理由について定めた政令が公布されたほか、最高裁も平成20年4月8日までに裁判員辞退の考慮要素についてまとめました。
法律で定められた辞退事由(裁判員法16条)
・年齢が70歳以上である(1項)
・地方公共団体の議員であり会期中である(2項)
・学生である(3項)
・次に掲げる事由があり、選任期日に出頭することが困難(8項)
イ 重い疾病又は傷害
ロ 重い病気の配偶者や親族等の入通院に自ら付き添う必要がある
ハ 重要な仕事であり自ら処理しなければ著しい損害が生じる恐れ
ニ 父母の葬式出席等社会生活上の重要な要件であり他の日に行えない
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政令で定められた辞退事由(平成20年1月17日付け政令第3号)
・妊娠中や出産8週間以内である
・別居の親族や同居人を自ら継続的に介護や養育する必要がある
・妻や娘の出産に伴う入退院の付添いや出産立会いの必要がある
・遠隔地に転居しており裁判所に出頭するのが難しい
・自分や第三者に身体上精神上または経済上の重大な不利益が生じる
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さらに、最高裁がまとめた辞退の考慮要素によれば、以下の事情は裁判員を辞退する際に考慮されそうです(必ず辞退が認められるものではなく、個々の裁判官の判断に委ねられる点はご注意ください)。
ポイントは、A代替性(他の人に代わりができるか)、B悪影響(不在による悪影響があるか)という点です。
裁判員辞退の際に考慮されそうな事情
・夫と二人で理容店を営業する50代の女性でアルバイトでは難しい
・小物屋を一人で営む60代の店主だが不況でアルバイトも雇えない
・緊急手術を行う必要がある熟練の外科部長
・重要な学会発表を予定する内科医であり裁判日と発表が重なる
・受験シーズンを控えた中学高校の担任の先生
・卒業式などの行事が裁判日に重なる先生
・会社の決算期を控えた経理責任者
・就職活動中で現に就職説明会や面接と裁判が重なる
・家族で営む旅館の女将で年末年始の繁忙期に当たる
・Jリーグの試合出場が予定されるレギュラーのプロサッカー選手
・建築中の建築物の現場監督責任者である
・妻と二人で行う農家であり田植えの繁忙期に当たる
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なお、裁判官が裁判員法に定める辞退事由を認めなかった場合でも、検察官や弁護人が、理由を示さずに裁判員を不選任にすることができます(裁判員法36条・理由を示さない不選任の請求)。ですから裁判員候補者が、「どうしても裁判員になれない」という事情や「なりたくない」という気持ちを検察官や弁護人に伝えることができれば(?)、辞退事由がない場合でも、裁判員から除外される可能性はあります。
実際裁判員模擬裁判でも、「傍聴者が指摘した、常識的な感覚で辞退を認めても良いのではないかと考えられる『気の毒な』裁判員候補者は、検察官及び弁護人の権利行使によって、事実上、裁判員に選任されずに済んだ」(季刊刑事弁護42号・25頁など)というケースが報告されています。
裁判員制度は、「国民に強いる」制度ではなく、「国民に参加して頂く」制度と捉えるべきであって、個々の辞退申出については柔軟に解釈すべきですし、裁判官が頑な場合には、弁護人・検察官が不選任請求を積極的に利用していくことが求められます。「強いられた裁判員」は、結局のところ、裁かれる被告人にとっても不利益になるでしょう。
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