最高裁判所第一小法廷が平成20年4月24日、チーム医療として手術が行われた場合の総責任者の説明義務違反について判断しました。
チーム医療の総責任者が常に自ら患者に説明しなければいけないものではなく、主治医が十分な知識・経験を有していれば、主治医に説明をゆだねて構わないとの判断です。
医者だけではなく弁護士がチームとして訴訟を行うことも増えていますが(薬害肝炎などの集団訴訟などがまさにそうです)、常に、代表や事務局長が、個別原告に対して説明を行わないといけないというのは非現実的。実際は担当弁護士が担当原告に対する説明等を行います。その意味でも常識的な判断といえるでしょう。
もっとも、「主治医の説明が不十分でも、総責任者が必要に応じて主治医を指導・監督していた場合には責任を負わない」とした点はやや疑問です。総責任者の「指導・監督」の対象は、「主治医が行った説明が十分だったか」という結果まで及ぶべきです。でなければチーム医療治療を受けていた患者には、「何のためのチーム医療なのか」と納得できない思いがどうしても残ってしまいます。
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一般に,チーム医療として手術が行われる場合,チーム医療の総責任者は,条理上,患者やその家族に対し,手術の必要性,内容,危険性等についての説明が十分に行われるように配慮すべき義務を有するものというべきである。しかし,チーム医療の総責任者は,上記説明を常に自ら行わなければならないものではなく,手術に至るまで患者の診療に当たってきた主治医が上記説明をするのに十分な知識,経験を有している場合には,主治医に上記説明をゆだね,自らは必要に応じて主治医を指導,監督するにとどめることも許されるものと解される。そうすると,チーム医療の総責任者は,主治医の説明が十分なものであれば,自ら説明しなかったことを理由に説明義務違反の不法行為責任を負うことはないというべきである。また,主治医の上記説明が不十分なものであったとしても,当該主治医が上記説明をするのに十分な知識,経験を有し,チーム医療の総責任者が必要に応じて当該主治医を指導,監督していた場合には,同総責任者は説明義務違反の不法行為責任を負わないというべきである。このことは,チーム医療の総責任者が手術の執刀者であったとしても,変わるところはない。
これを本件についてみると,前記事実関係によれば,上告人は自らB又はその家族に対し,本件手術の必要性,内容,危険性等についての説明をしたことはなかったが,主治医であるC医師が上記説明をしたというのであるから,C医師の説明が十分なものであれば,上告人が説明義務違反の不法行為責任を負うことはないし,C医師の説明が不十分なものであったとしても,C医師が上記説明をするのに十分な知識,経験を有し,上告人が必要に応じてC医師を指導,監督していた場合には,上告人は説明義務違反の不法行為責任を負わないというべきである。ところが,原審は,C医師の具体的な説明内容,知識,経験,C医師に対する上告人の指導,監督の内容等について審理,判断することなく,上告人が自らBの大動脈壁のぜい弱性について説明したことがなかったというだけで上告人の説明義務違反を理由とする不法行為責任を認めたものであるから,原審の判断には法令の解釈を誤った違法があり,この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。
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