2009.07.31

民法成年年齢の引下げ最終報告書

 民法の成年年齢の引下げについての最終報告書(第2次案)が、法務省サイトにアップされました。
 最終報告書を取りまとめる15回会議で配布された資料ですので、若干内容は変わるかもしれませんが、大枠はこれで分かります。25頁(末尾参考資料等をいれると39頁)ありますが、わかりやすい内容にまとまっています。

  最終報告書(第2次案)

 先日のエントリーで指摘した「他の法令への波及」という問題点については、次のように注釈で指摘しています。

 なお、部会では、民法の成年年齢の引下げのみの検討を行い、その他の法令(未成年者飲酒禁止法、少年法等)については、年齢条項の見直しに関する検討委員会の決定に沿って、それぞれの法令を所管する府省庁・部局において検討が行われることと考えている。したがって、部会においては、民法の成年年齢の引下げがその他の法令に及ぼす影響については検討の対象としておらず、ここでいう民法の成年年齢の引下げは、未成年者飲酒禁止法や少年法等の年齢の引下げを含意するものではない(注2、3頁)。

 「他の法令への波及効果」が、民法成年年齢引下げ議論に後ろ向きの影響を与えないように、慎重な書きぶりで予防線を張っていますが、国会等で審議される際には、他の法令に波及させるか否かは検討せざるを得ないでしょうし、事実上、議論を引き起こしますので注意が必要です。

 18歳・19歳を成人として取引対象にすることによって拡大しかねない消費者被害対策としては、以下のように指摘しています。

 ア 若年者の社会的経験の乏しさにつけ込んで取引等が行われないよう、取引の類型や若年者の特性(就労の有無、収入の有無等)に応じて、事業者に重い説明義務を課したり、事業者による取引の勧誘を制限する、イ 若年者の社会的経験の乏しさによる判断力の不足に乗じて取引が行われた場合には、契約を取り消すことができるようにする ウ 若年者が消費者被害にあった場合に気軽に相談できる若年者専用の相談窓口を消費生活センターに設ける エ 18歳、19歳の者には契約の取消権がないということを18歳、19歳の者に自覚させるような広報活動をする オ 特定商取引に関する法律7条3号、特定商取引に関する法律施行規則7条2号では、老人その他の者の判断力の不足に乗じて一定の取引をした場合には、主務大臣が販売業者に対して、必要な措置を指示することができる旨の規定が置かれているが、ここに「若年者」を付け加えるなどの意見がだされた(16頁17頁)。

 ウ、エなどは、消費者3大被害者層(若年、高齢者、主婦)に共通な施策ですし、そもそもあまり実効性はないと思われます。
 実務的なポイントは、イの規定内容になるでしょうか。

 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2009.07.30

「成人18歳」法制審議会(民法成年年齢部会)の最終報告

 法制審議会の民法成年年齢部会は7月29日、民法の成人は18歳が適当とする最終報告書をまとめました。ただし、法改正の時期は、国会の判断に委ねるべきとしています。

  民法成年年齢部会の名簿

 「成人」に関連する主立った現在の民法の条文は下記の通りです。

 年齢20歳をもって、成年とする(4条)

 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる行為については、この限りではない(5条1項)

 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる(5条2項)

 男は、18歳に、女は、16歳にならなければ、婚姻をすることができない(731条)

 成年の子は、その承諾がなければ、これを認知することができない(782条)

 成年に達した者は、養子をすることができる(792条)

 未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない(798条)

 成年に達しない子は、父母の親権に服する(818条1項)

 後見は、次に掲げる場合に開始する(838条)
 一 未成年者に対して親権を行う者がないとき・・

 20歳を成年とする規定は、明治9年にさかのぼります。
 明治9年4月1日太政官布告第41号が、「自今満二十年ヲ以テ丁年相定候」としました。旧民法が、「丁年」を「成年」と改め、さらに現行民法に引き継がれたものです(遠藤浩「基本法コンメンタール・民法総則・第5版」(日本評論社、26頁)。

 江戸時代は元服すれば「大人」とみなされていましたが、明治政府は、21歳成人を主流としていた当時の欧米諸国を模倣して、「20歳成人」と定めたようです。

 では現在の各国の制度はどうなっているでしょうか。

 18歳 アメリカ(一部除く)、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、ロシア、オランダ、中国

 20歳 日本、韓国(但し選挙権は19歳から)、台湾、タイ(但し選挙権は18歳から)、ニュージーランド

 21歳 アルゼンチン、エジプト、南アフリカ、モナコ(但し、いずれも選挙権は18歳から)

 そのほか、法務省によると、昨年8月に調査した187国のうち141国が、18歳を成人としているとのことです。
 ちなみに、天皇・皇太子・皇太孫の成年は、現在も18歳です(皇室典範22条)。

 一方、引き下げによる弊害はないのでしょうか。
 確かに、大学生や20歳前半の消費者被害(呉服商法、インターネット詐欺、ネズミ講など)は、弁護士相談にも比較的多数寄せられています。成年を引き下げた場合さらに被害が拡大する可能性はあるでしょう。
 しかしこの点は法制審議会が、「引き下げで生じる恐れがある消費者被害対策の充実を条件」としており、評価できます。
 
 一番の問題は、191件にものぼるこ成人年齢に関する法律の取扱でしょう。
 例えば、少年法は、20歳未満の少年を対象としていますが、民法における成人年齢引き下げに伴い、少年年齢も引き下げるとなると、少年保護行政は根本からの大転換に迫られます。
 その他にも、公職選挙法はもとより、未成年者飲酒禁止法、未成年者喫煙禁止法、銃刀法、競馬法、モータボート競争法、医師法、税理士法などが関連してきます。

 いずれにせよ総選挙後の国会審議に委ねられますが、過去に「民法、少年法の成人年齢を18歳に」としていた民主党も、今回のマニフェストからは外しており、先行きは不透明です。
 また、今回の最終報告書はあくまで成年年齢部会のものにすぎず、正式に法務大臣に諮問されるためには、9月の法制審議会総会で可決される必要もあります。

 臓器移植法改正のときのようにバタバタと決めるよりは、民法成年年齢部会が、選挙前のこの時期に早めに国民、国会に問題提起したことは意義があるでしょう。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2009.07.03

民法(債権法改正)への福岡県弁護士会の取組

 民法(債権法)の改正論議が活発になってきました。
 経過は以下の通りです。

 まず、民法(債権法)改正検討委員会(鎌田薫委員長、内田貴事務局長)が2006年に発足。改正検討委員会は、第1準備会から第5準備会まで分かれて議論し、その結果が「債権法改正の基本方針」として2009年4月に発表されたものです(「総特集 債権法改正の基本方針」NBL904号)。

 今秋にも法制審議会において議論が開始する可能性がありますので、実務家の視点からも早めに問題提起していくことが必要です。
 福岡県弁護士会も司法制度委員会の中に「民法改正部会」を立ち上げ、私も委員に委嘱されました。

 消滅時効の検討において、民法724条の除斥期間の規定も検討する必要があるとして、第5準備会が検討を行っています(民法(債権法)改正検討委員会・全体会議(第5回)議事録)。

 集団訴訟の視点としてはやはり724条の解釈論が一つの大きな論点になりますから、消滅時効に関して積極的に検討を加えてみたいと思っています。

| | Comments (0) | TrackBack (0)