2009.06.16

福岡県弁護士会、裁判員制度に関する市民モニター制度導入

 福岡県弁護士会は、裁判員制度に関して「市民モニター制度」を導入します。全国で初めての試みです。
 一般市民に裁判員裁判を傍聴してもらい、検証してくことを目的にするものです。

 事前登録した18歳以上のモニターから選ばれた市民1人が、福岡地裁等で行われる裁判員裁判を初公判から判決まですべて傍聴して、数十項目のアンケートに答えてもらいます。また、モニターの目から判決も予想して頂きます。
 6月29日に福岡県弁護士会館において希望者向けの説明会を開催します。

 「裁判員制度」市民モニターへのご協力のお願い   
                 福岡県弁護士会会長 池永 満
           
 このたび福岡県弁護士会では,下記の要領で裁判員制度に関する市民モニター制度を導入することとなりました。

 裁判員制度という新しい制度について市民の皆様から意見を頂くためには,実際に裁判を第1回から判決まで通して見て頂き,その率直な感想を伝えて頂くことが最も有意義だと考え,この度の市民モニター制度の創設に至りました。是非,多くの市民の方々にご参加頂きたく,ご案内申しあげている次第です。
 当会にて予定している市民モニターは,福岡県内在住の18歳以上の方で,年齢以外の要件については裁判員法に定める裁判員の資格を有する方を予定しております。

 市民モニター制度に興味を持たれた方がおられましたら,ご足労をおかけいたしまして誠に恐縮ではございますが,平成21年6月29日(月)午後3時から午後5時まで,福岡県弁護士会館にて開催される説明会にお越し頂けますようよろしくお願いいたします。

 なお,市民モニターとしての裁判傍聴は,原則として1つの事件について1人以上を予定していますが,福岡における想定事件数と名簿登録者の人数の関係等から,市民モニターとしてご登録を頂いた後,実際にモニターとしての傍聴機会を準備できない可能性もございます。その点については予めご了承下さい。


*定員に達した場合は、お断りする可能性もございます。(予約不要・先着順)
*説明会当日は、30分前より開場致します。
*駐車場はございませんので、公共交通機関を使って起こし下さいますようお願いします。

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2009.05.27

裁判員裁判(模擬裁判)の成果と課題

 裁判員裁判が開始しました。弁護士会・裁判所・検察庁は、全国で500回以上の模擬裁判、240回以上の模擬選任手続きを行ってきました。
 しかし実際の裁判員裁判では様々な問題が噴出するでしょうし、法曹3者に対する「不満、幻滅、失望」も広がるでしょう。
 いずれにしろ確実に出る「不満・幻滅・失望」をどのように解消していくかが、裁判員制度「存続」の鍵と思われます。

 この点、最高裁判所事務総局刑事局がまとめた「模擬裁判の成果と課題」(判例タイムズ1287号8頁)が、現時点の問題点をうまくまとめており参考になります。50頁弱ですが、マスコミの方も読んでおくと報道する際のヒントになるのではないでしょうか。
 例えば下記のような感じです。
 

 弁護人において、被告人の犯人性を争う根拠として、被告人の善性格を主張しようとした例もあったが、このような主張を許容するとなれば、検察官による被告人の悪性格の立証を認めることにも繋がりかねないこともあり、相当ではない場合もあり得ると思われる(12頁)

 直接主義・口頭主義の観点からも・・立証は基本的には人証によって行われることが中心になろう・・(しかし)例えば・・被害者の受傷状況は、殺意の有無を判断するに当たって重要な事柄であるが、写真を用いないとすれば、裁判員が、的確な心証を取ることは困難と思われる。各地で行われた模擬裁判でも「被害者の傷の状況について医者の供述調書のみによる立証となったため、傷の箇所のイメージをつかむことができなかった」との報告がなされている(14頁)。

 各地で行われた模擬裁判でも、「裁判員からは、当事者の主張立証の中には判決の結論にどのように影響するのか不明なものも多かった、裁判所は判断すべき争点をもっと絞って欲しいなどの意見がでた」との報告が多くなされている(15頁)。

 裁判員にメモを含めた資料の持ち帰りを認めるかという問題もある。・・配布資料やメモ等には関係者のプライバシーに係わる事項のほか、裁判員の心証や評議の内容が記載されることも考えられるところであり、・・資料の持ち帰りについては慎重である必要があろう(20頁)。

 プレゼンテーションソフトの使用については裁判員役は、概ね、分かりやすいとの感想を述べているが、冒頭陳述はあくまで証拠に基づくものでなければならず、例えば、再現ビデオ的なアニメーションを用いることは、あたかも主張の場である冒頭陳述で立証がなされるようなイメージをもたれ易く、事後の立証との関係からして相当でない場合もあろう。・・プレゼンテーションソフトの画面と話者とが離れた位置にある場合、視点を一点に集中させにくいなどの感想が述べられることがあり・・(22頁)。

 模擬裁判において、尋問がポイントを絞ったものになっていなかった場合、裁判員役からは、「何を聴きたかったのか分からなかった。」との感想が述べられることが相当にあった(24頁)。

 模擬裁判では、裁判員役から、被告人が反省していることは有利な事情として考えるべきではないとの意見が述べられたことがある。被告人質問等に際して、このような意見を裁判員が有していることを感得した場合は、弁護人としても、そうした意見に対しては、弁論の中で特別予防の観点からの的確な説明をするなどの工夫をすることになろう(28頁)。

 左陪席については、もっと裁判員と随時会話をし、その疑問に答え、あるいは注意を喚起するという非定型的な接触を図ってもよいであろうし、それに右陪席が随時加わっても差し支えないものと思われる。なお、模擬裁判では、左陪席が評議で出された発言の内容をパソコンに入力することに専念しすぎてしまい、裁判員役から裁判官の在り方としていかがなものかとの疑問が呈されたことがある。・・左陪席をこうした「書き役」と位置づけることは相当でないと思われる(37頁)。

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2008.09.03

やってみよう、裁判員

 来年5月、いよいよ裁判員制度がスタートします。福岡県弁護士会では、みなさまに裁判員制度のことや刑事裁判のしくみをよりよくご理解いただけるよう、シンポジウムを開催いたします。当日は、実際に裁判員裁判を体験していただくなど、とてもためになる企画をご用意しております。ぜひ会場にお越し下さい。
 予約は不要です。先着200名にマスコットキャラクター「サイサイ」のクリアファイルを贈呈します。


 9月27日(土) 13時~16時30分(12時30分開場)
   NTT夢天神ホール(岩田屋本館7階)

 [プログラム] ・裁判員になったらどうすればいいの?
         ・裁判員裁判を体験してみよう  ・米国の刑事裁判事情


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2008.04.08

裁判員の辞退理由

 裁判員制度が来年平成21年5月21日から開始することが決定しました。同日以降に起訴された重大事件が対象になります。来年7月以降には皆さんにも呼び出し状が届く可能性があります。

 個人的には裁判員制度は日本の司法を大きく変えるきっかけになると期待しています。「弁護士はなんて弁論が下手なんだ」、「検察官はなんて一本調子なんだ」、「裁判官はなんて杓子定規なんだ」「結局、裁判なんて常識で、法律家でなくても大丈夫なんだ」・・・裁判員に参加した方には司法の敷居が一気に低くなると思います。そして裁判員参加者からの司法に対する不満や要求が、司法全体をさらに健全化していくことでしょう。

 そうはいっても色々な意味で負担になる方々もおられます。そこで裁判員法が辞退事由を定めるだけではなく、平成20年1月17日には裁判員を辞退できる理由について定めた政令が公布されたほか、最高裁も平成20年4月8日までに裁判員辞退の考慮要素についてまとめました。


 法律で定められた辞退事由(裁判員法16条)

・年齢が70歳以上である(1項)
・地方公共団体の議員であり会期中である(2項)
・学生である(3項)
・次に掲げる事由があり、選任期日に出頭することが困難(8項)
 イ 重い疾病又は傷害
 ロ 重い病気の配偶者や親族等の入通院に自ら付き添う必要がある
 ハ 重要な仕事であり自ら処理しなければ著しい損害が生じる恐れ
 ニ 父母の葬式出席等社会生活上の重要な要件であり他の日に行えない
 


 政令で定められた辞退事由(平成20年1月17日付け政令第3号)

・妊娠中や出産8週間以内である
・別居の親族や同居人を自ら継続的に介護や養育する必要がある
・妻や娘の出産に伴う入退院の付添いや出産立会いの必要がある
・遠隔地に転居しており裁判所に出頭するのが難しい
・自分や第三者に身体上精神上または経済上の重大な不利益が生じる
 

 さらに、最高裁がまとめた辞退の考慮要素によれば、以下の事情は裁判員を辞退する際に考慮されそうです(必ず辞退が認められるものではなく、個々の裁判官の判断に委ねられる点はご注意ください)。
 ポイントは、A代替性(他の人に代わりができるか)、B悪影響(不在による悪影響があるか)という点です。


 裁判員辞退の際に考慮されそうな事情

・夫と二人で理容店を営業する50代の女性でアルバイトでは難しい
・小物屋を一人で営む60代の店主だが不況でアルバイトも雇えない
・緊急手術を行う必要がある熟練の外科部長
・重要な学会発表を予定する内科医であり裁判日と発表が重なる
・受験シーズンを控えた中学高校の担任の先生
・卒業式などの行事が裁判日に重なる先生
・会社の決算期を控えた経理責任者
・就職活動中で現に就職説明会や面接と裁判が重なる
・家族で営む旅館の女将で年末年始の繁忙期に当たる
・Jリーグの試合出場が予定されるレギュラーのプロサッカー選手
・建築中の建築物の現場監督責任者である
・妻と二人で行う農家であり田植えの繁忙期に当たる

 なお、裁判官が裁判員法に定める辞退事由を認めなかった場合でも、検察官や弁護人が、理由を示さずに裁判員を不選任にすることができます(裁判員法36条・理由を示さない不選任の請求)。ですから裁判員候補者が、「どうしても裁判員になれない」という事情や「なりたくない」という気持ちを検察官や弁護人に伝えることができれば(?)、辞退事由がない場合でも、裁判員から除外される可能性はあります。
 実際裁判員模擬裁判でも、「傍聴者が指摘した、常識的な感覚で辞退を認めても良いのではないかと考えられる『気の毒な』裁判員候補者は、検察官及び弁護人の権利行使によって、事実上、裁判員に選任されずに済んだ」(季刊刑事弁護42号・25頁など)というケースが報告されています。
 裁判員制度は、「国民に強いる」制度ではなく、「国民に参加して頂く」制度と捉えるべきであって、個々の辞退申出については柔軟に解釈すべきですし、裁判官が頑な場合には、弁護人・検察官が不選任請求を積極的に利用していくことが求められます。「強いられた裁判員」は、結局のところ、裁かれる被告人にとっても不利益になるでしょう。

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