「最近、裁判所からカルテの送付依頼が多くなったけど、患者さんの同意書を一緒に送ってくれないから困るんですよね。法律関係者のカルテに対する意識は低すぎませんかね。」昨日の薬害オンブズパースン例会に出席した薬剤師さんから投げかけられた疑問です。
医療過誤事件に限らず、交通事故事件などにおいて、被告側が裁判所を通じて病院からカルテを取り寄せることがあります。その際、被害者である患者さんの同意書を添付しないことが多いため、医療機関が苦慮しているというのです。裁判所、原告、被告の代理人は同意しているのでしょうが、患者本人の明示の同意を取り付けていないことに原因があります。
アメリカでは、2003年4月に施行された医療情報保護法(HIPAAプライバシー・ルール)が、アメリカの医療現場に大きな影響を及ぼしているといいます(ジュリスト・1273号・174頁「医療情報保護法(HIPAAプライバシー・ルール)の影響」樋口範雄)。この論考では、ルール違反が争われたアメリカの判例が紹介されています。
レーザー手術の医療過誤で、別のX医師の手術を受ける結果になってしまったという裁判。病院側弁護士が、患者に無断でX医師に接触し、患者の診療情報を含めて話を聞き出します。その上で、レーザー手術の失敗によってX医師の手術が必要になったものではないと立証するため、X医師を証人申請したのです。
被告弁護士がX医師に接触して無断で患者個人情報を聞き出すのは、HIPAAルール違反という異議が原告から出されました。
裁判所は、最終的に、HIPAAルール違反を認めましたが、違反の制裁としては、X医師と話し合った内容を事前に患者側に開示するように命じるにとどまり、X医師の証人申請を却下するまでには至りませんでした。
日本の裁判所におけるカルテ送付の問題も、このアメリカの裁判の問題も、事前にきちんと患者の同意を取り付ける手続きを取っていれば、何の問題もなかったケースと思われます。審理のために、カルテを取り寄せたり、X医師に証言してもらう必要性は認められるからです。患者さんの同意を取り付けないこと自体が、プライバシー侵害になることを、法律家だからこそきちんと認識する必要があります。
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