2009.06.12

模擬医療ADR 岡山

 東京三会を皮切りに全国の単位会でも検討が進みつつある「医療ADR」。岡山弁護士会が模擬医療ADRを実施します。

 事案は、「女性(60歳)が脳ドックの検査を受けたところ、脳動脈瘤が見つかる。担当医は、破裂の危険があるということで、開頭手術を実施したが、翌日、女性はスムーズに言葉が出なくなり、その左手足には麻痺症状が出る。病院と女性は話し合いをしたが、前に進まない。
 そこで、このトラブルが、岡山弁護士会の医療仲裁センターに持ち込まれた・・」というもののようです。

 医療ADRの意義
 医療ADR福岡県弁護士会の取組

 6月14日(日) 午後2時~5時  参加費 無料
 場所 岡山衛生会館三木記念ホール(岡山市中区古京町1-1ー10)
 主催 岡山弁護士会   共催 岡山大学大学院法務研究科

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2009.06.09

臓器移植法改正案の成立

 今国会で成立するか大きな注目を集めているのが、臓器移植法改正案です。

 A案(提出者中山太郎・自民党、福島豊・公明党)、B案(石井啓一・公明党、阿部俊子・自民党)、C案(阿部知子・社民党、枝野幸男・民主党)、D案(根本匠・自民党、笠浩史・民主党)と4つの法案が提出されるという異例な展開をたどっています。この「異例な展開」を招いたのは、やはり、「人の死」についての社会的合意が得られておらず、かつ、議論が余りにも性急だからといえるでしょう。

Card_softbank 最初に提出されたA案は、移植学会などが支持しているようです。ところが、A案は、脳死を「人の死」とするため反発を受け、その後の3法案提出という事態を招きました。
 A案を支持する議員は、「本人が拒否できるのだから、一般的に脳死を人の死と考えるものではない」と主張したり、一方で、別の議員は、「脳死は一般に人の死と社会的にほぼ合意できている」、「脳死を人の死と認めていないのは日本だけ」(5月27日付け毎日新聞・冨岡勉議員発言)と主張するなど、主張の論拠がぶれています。

 いずれにしろ、A案は、原則として脳死を「人の死」とした上で、本人が拒否することもできるとする「例外」を認めるもので、脳死を人の死とする根本的な考え方であることは間違いありません。
 そして、「人の死」をどのように考えるのか、という死生観にかかる根元的な重要論点について、「拒否することもできる」という例外を設ける技巧的な方法をもって、批判をかわそうとしているにすぎません。
 人の死をどのようにとらえるか国民的合意がまだあるとはいえず、脳死を人の死とする「立法事実」はないというほかありませんから、個人的には大いに疑問符がつく案です。

 一方で、臓器移植を待つ患者さんからは、現在の臓器移植法による「15歳以上」という提供年齢では、日本内での臓器移植が不可能で海外渡航するほかない、という切実な訴えがあるのもまた事実です。

 B案(提供可能年齢を引き下げ12歳以上とする)・C案(現行法と同じ)では、その訴えにこたえているとはいえないでしょう。

 この点、D案は、脳死の位置づけについては現行法と同様にとらえつつ、提供可能年齢は、A案と同じく制限なしとして大きく広げます。
 そして、「15歳未満」の場合は、「本人の意思表示」が有効とはいえませんから、家族の同意とともに第三者機関の了承を条件とするところが特色です。

 脳死を一般的に「人の死」とすることは避けつつ、臓器移植提供の条件について、「第三者機関の了承」という技巧的な手当をするものです。
 「技巧的な手当」をする点は、A案と同じですが、それが、「脳死が人の死か」という根元的な論点ではなく、「提供の条件」という論点についてですので、D案なら現行臓器移植法の「改正」として受け入れる余地があるのではないかと思います(もっとも、D案に対しては、子どもが死亡しているかを「親の判断」に委ねるものであって、酷であるという有力な批判もあります)。

 またそもそも、脳死移植件数が1999年以降わずか81例にとどまっており、日本人の国民性からして、法改正でも移植が劇的に増えるとは言えないとも指摘されています。今国会での実質議論がわずか「9時間」であることもふまえると、4案ともに廃案として議論を継続して、国会内合意、国民的合意を模索することも一つではないでしょうか。

 皆さんはどの案を支持されるでしょうか?いずれにしろ今月中旬にも採決が行われる見通しです。

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2009.06.05

医療裁判と医療ADRについて考えるシンポジウム

 医療ADRに関するシンポジウムが増えてきました。
 医療裁判と医療ADRについて考えるシンポジウム「医療事故と被害者の思いから学ぶ」が、大阪で開催されます。

 6月27日(土) 午後13時30分~16時45分
  エル大阪6階大会議室  参加費 1000円(資料代込)

 第1部 被害の実情を知る当事者からの発言
 ~ 私たちはなぜ提訴したのか、しなかったのか~

 第2部 有識者による講演
 岡本佐和子さん(元ジョンズ・ホプキンス病院 ペイシェント・アドボケイト) / 石川寛俊さん(弁護士) / 加部一彦さん(愛育病院新生児科部長) / 稲葉一人さん(元裁判官)

 第3部 質疑応答とパネルディスカッション

 会場定員:200名 主催:医療情報の公開・開示を求める市民の会

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2009.06.03

医療ADR福岡 その2

 福岡県弁護士会が検討している医療ADR(Alternative Dispute Resolution)は、既に平成19年9月から東京三弁護士会の仲裁センター(東京第一弁護士会、東京第二弁護士会)、紛争解決センター(東京弁護士会)の中に設置されて運営されています。

 平成19年9月から平成20年8月まで1年間の申立件数は51件、相手方応諾率は63パーセント、終了件数は24件、うち和解成立数は16件(67パーセント)になっており、和解金額は、20万円台から500万円台です。

 この医療ADRのメリットは、当事者の負担する費用が訴訟より安く済み、かつ、審理回数が1回から数回と比較的短い期間で済むことと指摘されています。そして、医療機関側が過失を激しく争うなど紛争性が高い事案は、医療ADRには適していないと言われています。
 しかしながら、過失を認めているケースだけの処理であれば、現在の調停でも解決可能です。過失に争いがあるものの双方が歩みよる余地があるような事例について解決できるかが、医療ADRの一つの意義でしょう。

 また、厚生労働省が現在議論を進めている医療関連死モデル事業とのリンクも指摘されています。
 すなわち、診療中の患者の予期せぬ死亡(診療関連死)の死因究明と再発防止を目的に、医師と法律家による事案検討がなされていますが、この事業は、2010年度に「医療版の事故調査委員会(医療版事故調)」としての開始を目指しています。
 この医療版事故調は、医療的判断まで行いますが、一方で損害額の認定など法的判断までは行いません。医療版事故調が明確にした事実関係・医療的判断をベースに、当事者が医療ADRを申し立てることもあるでしょう。このように、医療ADRの意義としては、医療版事故調の受け皿ということも考えられるところです。

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2009.05.25

医療ADR福岡

 福岡県弁護士会は、年内にも医療ADRを設置するため、準備を進めています。
 「ADR」とは、Alternative Dispute Resolution、直訳すると、代替的な紛争解決になりますが、裁判外紛争解決と訳されています。

 ADR法が2004年11月に成立し、2007年4月1日に施行され、最近注目されているADRですが、裁判所の「調停」や交通事故紛争処理センターなどもADRですから、「古くて新しい問題」(和田仁孝「新しいADRの世界をみる」(法学セミナー631号、2007年)16頁)ということができます。

そして、医事紛争、医療事故においても、裁判以外の解決ができないか、そういう視点で注目されているのが「医療ADR」になるわけです。

「医療ADR」は、(1)裁判所主導によるパネル方式(アメリカ型)、(2)民間=医師会主導による仲裁・鑑定方式(ドイツ型)、(3)行政機関主導による仲裁・鑑定方式(フランス型)が代表的と言われています(植木哲『医療の法律学・第3版』(有斐閣、2007年)72頁)。

弁護士会に設置する医療ADRは、(2)の民間型に含まれると言えるでしょう。
 この民間型医療ADRの取組としては、茨城県医療問題中立処理委員会の活動があげられますが、医師会内部における斡旋・調停機関としての制約(批判)は払拭されていないとの指摘もあります(植木哲「医療ADR機関設立の試み-千葉県の場合」(判例タイムズ1271号、2008年)47頁)。

つまり、医療ADRがその機能を果たすためには、「中立性」をいかに実現するかがまず問題になるわけです。弁護士会に設置する医療ADRにおいても、患者側で医療過誤を扱う弁護士、医療機関側で医療過誤を扱う弁護士、さらに、裁判官・学者経験者の弁護士を仲裁人に選任するなど、その中立性の確保に力を注いでいます。

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2009.05.22

新型インフルエンザ報道・対策に関する緊急アピール

 新型インフルエンザに関する報道が紙面、画面に流れないことはない昨今です。新型インフルエンザが現時点で弱毒性であると指摘されていることからすると、各県で患者が出るたびに右往左往する報道は、首を傾げざるを得なく思っている方も少なくないのではないでしょうか。
 九州薬害HIV原告団・弁護団が5月21日、緊急アピールを発表しました。

 「新型インフルエンザ対策 及び 報道に関する 緊急アピール」

 4月末にメキシコでの豚インフルエンザ発生が報じられて以来、厚生労働省及び自治体はインフルエンザ対策に奔走し、マス・メディアは連日のようにこのニュースを大々的に取り上げています。5月9日には、日本における最初の感染者が確認され、18日には兵庫、大阪の2府県で計2664校の休校が決定されたと報じられています。

 私たちは、このような行政やマス・メディアの対応をみるにつけ、1980年代後半のエイズ・パニックを思い起こさざるを得ません。
 感染の恐怖を煽ることを感染症対策の柱とした行政と、それに無批判に乗ったマスコミの過剰報道により、感染者たちは、職場や学校から排除され、医療からさえも拒まれました。1989年にはエイズ予防法が成立し、圧倒的多数の感染者は、感染の事実を誰にも告げることができず、社会からの孤立を強いられました。この状況は、いまもなお続いています。この時期に社会を席巻したHIV感染者に対する差別・偏見は、いまもなお日本社会に根深く残っているのです。
 同様のことは、ハンセン病問題にも言えるはずです。
 1996年に成立した感染症予防法が、その前文で、「我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。/このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ、感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている」と謳っているのは、このような過去の感染症対策に対する反省があったはずです。

 ところが、今回の新型インフルエンザに対する行政、マスコミの対応には、そのような過去の感染症対策に対する反省が全く活かされていません。
 感染者は、何よりもまず「治療を必要としている患者」として扱われるべきであり、「社会防衛の対象となる感染源」として扱われるべきではありません。感染源としての扱いは、感染者が医療にアクセスすることを妨げ、結果的には感染者の潜伏に繋がります。感染者の人権に配慮しない感染症対策は、感染症予防策としても拙劣です。
 私たちは、行政担当者及びマス・メディアの方々に、過去の感染症対策の反省と、新型インフルエンザの感染力・毒力の正確な評価に基づいた冷静な対応を強く求めるものです。

 九州薬害HIV訴訟原告団 / 九州薬害HIV訴訟弁護団
 連絡先: ちくし法律事務所 092-925-4119

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2009.05.19

医療事故・医療安全に関するシンポジウム一覧

 5月は、医療事故・医療安全に関するシンポジウムが目白押しです。

[東京]
 ・5月19日(火) 午後4~6時
 日本医療機能評価機構大会議室
 産科医療補償制度原因分析委員会 仮想事例に基づく模擬原因分析
 仮想事例における原因分析報告書について(傍聴申込みは締め切られています)

 ・5月23日(土) 午後1時~4時半
 日本記者クラブ(東京内幸町)10階大会議室
 NPO日本医学ジャーナリスト協会主催公開シンポジウム
 「医学ジャーナリストを問う-衰退する検証力と発信力-」
 参加費:無料(定員250人)
 パネリスト ・秋元秀俊(ジャーナリスト,編集者)
 ・阿部文彦(読売新聞社会保障部記者) ・瀬尾隆(翻訳・医療ジャーナリスト)
 ・田中秀一(読売新聞医療情報部部長) ・田辺功(医療ジャーナリスト,元朝日新聞編集委員)
 ・鳥集徹(ジャーナリスト) ・中村雅美(日経新聞編集委員)
 ・松村満美子(ジャーナリスト,腎臓サポート協会理事長)
 モデレーター ・水巻中正(国際医療福祉大学大学院教授,元読売新聞社会保障部長)

 ・5月30日(土) 9:30~16:15
 日本教育会館(東京都千代田区一ツ橋2-6-2)
 医療安全全国フォーラム 「医療安全の実現をめざす8つの行動目標を達成しましょう」
 主催 ・医療安全全国共同行動推進会議、
 ・医療の質・安全学会 ・日本病院団体協議会
 ・日本医師会 ・日本歯科医師会 ・日本看護協会 ・日本臨床工学技士会
 参加費:3000円(学生500円)

 ・5月31日(日) 1:00~4:30
 港区高輪区民センター区民ホール
 安全を考えるシンポジウム 独立した事故調査機関の設立を求めて・・
    ~事故の原因究明なくして,真の再発防止なし~
 参加費:500円(資料代)
 主催:赤とんぼの会
 予定者 ・ノンフィクション作家(柳田邦男) ・明治大学理工学部教授(向殿政男)
 ・鉄道安全推進会議事務局長(佐藤健宗) ・元東京大学法学部COE特任研究員(中島貴子)
 ・医療問題弁護団(木下正一郎) ・エレベーター事件弁護団(前川雄司)
 コーディネーター ・中村雅人

[名古屋]
 ・5月30日(土)
 医療事故情報センター総会シンポジウム
 「院内メディエーターのあり方について考える」
 厚労省が医療機関と患者双方の対話をサポートする「院内相談員」の養成研修に補助金を支給する事業を開始し、対話自立型ADRと連動して「医療メディエーター」を養成する動きが広がっていることから、とのテーマでシンポジウムを行うこととなりました。
 シンポジスト ・稲葉一人(中京大) ・岡本左和子(東京医科歯科大)
 ・豊田郁子(新葛飾病院) ・和田仁孝(早大) ・佐原康之(厚労省)

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2009.01.10

産科医療補償制度と医療過誤

 産科医療補償制度が平成21年1月からスタートしました。同制度は、出産の際に出生児が重度脳性麻痺になった場合、医療機関・医師の過失の有無を問わず、3000万円の補償金が支払われる制度です。
 制度の概要は以下の通りです。

 補償対象は、
 1 出生体重が2000グラム以上かつ在胎週数33週以上
 2 身体障害者1級か2級相当の重症児

 以下の個別審査で補償の対象になることもあります。
 1低酸素状況が持続して臍帯動脈血中の代謝性アシドーシス(酸性血症)の所見が認められる場合(pH値が7・1未満)
 2 胎児心拍数モニターにおいて特に異常のなかった症例で、通常、前兆となるような低酸素状況が、例えば前置胎盤、常位胎盤早期剥離、子宮破裂、子癇、臍帯脱出等によって起こり引き続き、次のア~ウのいずれかの胎児心拍数パターンが認められ、かつ、心拍数基線細変動の消失が認められる場合
 ア 突発性で持続する徐脈
 イ 子宮収縮の50%以上に出現する遅発一過性徐脈
 ウ 子宮収縮の50%以上に出現する変動一過性徐脈

 補償金額は、600万円の一時金と20年に渡り毎年120万円を支払うものです。
 なお、平成21年1月1日以降の出産が対象ですが、当該医療機関が制度に加入していないと支払われません。

 産科医療補償制度の導入で医療過誤訴訟の抑制になることを期待しているようです。しかし、出生児が障害者1級、2級相当の障害を負えば、その損害は3000万円を優に超えます。したがって、産科医療補償制度にて補償金を受領しても、それとは別に、医療機関側の過失を立証して、3000万円を超える損害について、賠償請求(示談・訴訟)することは当然認められますから、医療過誤訴訟の抑制になるとは思われません。

 同制度の目的としては、不幸にも重度脳性麻痺を負担した家族の救済こそ第一の目的に位置づけなければなりません。
 そのためには、同制度に加入する医療機関を増やすことにくわえ、補償対象が、1級か2級に限定されているのは見直しの余地があります。
 そして、個別審査においては、患者家族救済の視点での運用がのぞまれるといえるでしょう。

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2008.12.18

医療事故調査機関早期設立キャンペーン

 医療事故調査機関の早期設立を求めるキャンペーンが行われていますのでご紹介します。署名用紙はこちらから。

 ・趣旨
 医療事故は、患者・家族にとってつらく悲しいことであり、関係した医療者にとっても心を痛める事態です。日本における医療事故による死亡者は年間2万人とも3万人とも言われています。適切な対策を講じていれば防ぐことができる事故は少なくありません。このような医療事故を少なくしていくためには、以下のような医療事故調査機関の設立が不可欠です。
 1999年以来、医療事故の原因を究明する医療事故調査機関のあり方に関する議論がなされてきました。今や1日も早く医療事故調査機関を設立することは国民的な課題です。

 ・目的
 医療事故の原因を究明して、再発防止を図り、医療事故にあった患者・家族への公正な対応を目的としたもの

 ・性格
 公正中立性: 手続と調査内容が公正中立である
 透明性: 公正中立に調査が行われていることが外部から明らか
 専門性: 事故分析の専門家により原因究明・再発防止を図る
 独立性: 医療行政や処分などを行う部署から独立している
 実効性: 体制づくりに国が充分な予算措置を講じる

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2008.10.30

医療事故・医療過誤の法律相談について

 「自分の受けた治療は正しかったのでしょうか」、「この後遺症は避けられなかったのでしょうか」、「家族が亡くなったのは本当にやむを得なかったのでしょうか」
 福岡県を含め九州沖縄山口地区でも、そんな医療事故、医療過誤についての法律相談が増えています。

 まず、医療事故、医療過誤について弁護士に相談する際には、次の事前準備をしておくと的確なアドバイスを受けることができるでしょう。

 経過をまとめる(日時・時間、症状、診断名、手術、検査の処置)
 医療機関から受けた説明の内容
 疑問点をまとめておく

 医療事故法律相談を受ける前に、この経過表だけでもFAXないしメールで伝えておくと、弁護士も多少の事前調査をした上で相談にのぞめます。

 また、カルテ(診療記録)を医療機関から入手しましょう。10年前まではカルテを入手するのも一苦労。必ず裁判所に証拠保全手続きをかけていました。しかし最近ではカルテ開示が浸透していますから、医療機関の医事課などに尋ね、定型書式で開示を申し込んでください。

 もちろんカルテ開示の場合には医療機関による「偽造」という問題は残ります。しかし大半の医療機関はそのような行為は行いません。当初からの対応に疑問がある、カルテ開示に拒否反応を示しているなど徴候がうかがえる場合には、弁護士に相談して証拠保全手続きを取ったほうが良いケースもあります。

 法律相談だけで結論が出ない場合は、弁護士に医療調査を依頼することになります。医療過誤事件として請求できるのか否かは、カルテを精査し、医療文献・過去の裁判例を調べるとともに、必要に応じて当該医療機関からの聴き取り、さらに協力してくれる第三者の医師からのアドバイスを受けるなどの調査を行わなければ分かりません。

 医療過誤事件は被害が大きいため、請求金額がえてして高額になります。請求金額が高額ということは弁護士費用も高額になりかねません(弁護士費用は、請求金額=経済的利益として、算出しますから、一般的には比例します)。

 そこで一定の調査を行う調査として受任して(費用は安くて済みます)、一定の方向性を出してから受任するのが、患者側として医療過誤を専門に取り扱う弁護士の通常のスタイルです(ただし、医療機関の責任が明白であり、医療機関側も損害賠償する意向を示しているような場合は、損害額が争点になりますから、損害賠償請求事件として当初から受任することになります)。

 調査が終了すると調査結果報告書を書面でお渡しします(口頭で説明するだけの弁護士もいるようですので、調査を依頼する時に確認しましょう)。
 この調査結果報告書には、損害賠償請求の可能性について理由とともに説明した上で、調査した医療文献、判例なども添付します。そして最終的に医療機関に損害を請求するのか否かを判断して頂くことになります。

 

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2008.07.23

医療版事故調:緊急公開シンポのご案内

 医療事故対策のための議論がいよいよ国会(秋の臨時国会)で始まりそうです。厚労省は昨年4月、「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」(参考・第13回議事録)を設置し、本年6月20日には、「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」を公表しました。
 一方、民主党も本年6月、「医療に係る情報の提供、相談支援及び紛争の適正な解決の促進並びに医療事故等の再発防止のための医療法等の一部を改正する法律(仮称)案骨子試案」(通称・患者支援法案)及び「医療事故等による死亡等(高度障害等を含む)の原因究明制度(案)」を発表しています。
 現在の医療版事故調をめぐる議論の最大の論点は、医療過誤の法的責任とりわけ 刑事責任のあり方をめぐる議論です。

 そこで、臨時国会における議論に先がけ、医療版事故調についてシンポジウムを開催することに致しました。九州・山口医療問題研究会も協賛しています。
 参加費は無料ですので、ご関心のある方はどなたでもご参加ください。

(日時)
2008年8月4日(月) 18時~20時30分

(場所)
明治大学アカデミーホール
 東京都千代田区駿河台1-1

(シンポジスト)
厚労省医政局総務課医療安全推進室長   佐原康之氏
自由民主党参議院議員          古川俊治氏
民主党医療事故調査制度作業チーム    (交渉中)
患者の視点で医療安全を考える連絡協議会準備会  勝村久司氏
自治医科大学麻酔科学・集中治療医学講座主任教授 瀬尾憲正氏
明治大学法科大学院教授(刑事法学)   清水真氏

(共催) 
医療問題弁護団、明治大学法科大学院医事法センター

(協賛) 
九州・山口医療問題研究会、京都医療過誤弁護団
医療事故研究会(東京)、神奈川医療問題弁護団
松戸医療事故フォーラム、札幌医療事故問題研究会
岡山医療問題研究会、長野県医療問題弁護団
患者の権利オンブズマン東京、埼玉医療問題弁護団

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2008.05.02

カルテ一部不開示に損害賠償が認められた事案

 薬害肝炎訴訟において給付金が受領できるか、ポイントはカルテ(医療記録)の存在です。カルテが存在している医療機関は、少なくとも患者から問い合わせがあった場合には、誠実にカルテを調査して正確に回答する義務があるというべきです。
 薬害肝炎弁護団の問い合わせに「使用していない」と回答しておきながら、1年後に「精査したところ使用が確認できた」と再回答してきた医療機関もありましたが、やはり問題というべきでしょう。

 この点、医療機関の杜撰なカルテ管理体制が問われた判決が出ています。
 患者側がカルテ隠匿改ざんを主張した事案について、医療機関の損害賠償責任を認めた平成20年2月21日大阪地裁判決です。隠匿改ざん自体は認めませんでしたが、証拠保全手続きおよびその後の訴訟手続きの中で、一部医療記録を患者に開示しなかった以上、債務不履行責任は免れないと判示しています。
 なお、医療機関は独立行政法人(以前の国立大学病院)ですから、その問われた責任は大きいというべきでしょう。


 被告において,本件入院カルテ1ないし6及び本件手術関連記録1を隠匿して原告に開示しないのではなく,被告主張のとおり,被告において本件入院カルテ1ないし6及び本件手術関連記録1を紛失したために原告に開示できなかったとしても,被告は,本件入院カルテ1ないし6及び本件手術関連記録1を原告に開示できなかったのであるから,診療契約上のてん末報告義務違反として債務不履行責任を免れない。
 以上によれば,被告には,本件入院カルテ1ないし6及び本件手術関連記録1を原告に開示できなかった限度で,診療契約上のてん末報告義務違反として債務不履行責任を負うこととなる。


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2008.04.28

チーム医療における総責任者の説明義務

 最高裁判所第一小法廷が平成20年4月24日、チーム医療として手術が行われた場合の総責任者の説明義務違反について判断しました。
 チーム医療の総責任者が常に自ら患者に説明しなければいけないものではなく、主治医が十分な知識・経験を有していれば、主治医に説明をゆだねて構わないとの判断です。
 医者だけではなく弁護士がチームとして訴訟を行うことも増えていますが(薬害肝炎などの集団訴訟などがまさにそうです)、常に、代表や事務局長が、個別原告に対して説明を行わないといけないというのは非現実的。実際は担当弁護士が担当原告に対する説明等を行います。その意味でも常識的な判断といえるでしょう。
 もっとも、「主治医の説明が不十分でも、総責任者が必要に応じて主治医を指導・監督していた場合には責任を負わない」とした点はやや疑問です。総責任者の「指導・監督」の対象は、「主治医が行った説明が十分だったか」という結果まで及ぶべきです。でなければチーム医療治療を受けていた患者には、「何のためのチーム医療なのか」と納得できない思いがどうしても残ってしまいます。


 一般に,チーム医療として手術が行われる場合,チーム医療の総責任者は,条理上,患者やその家族に対し,手術の必要性,内容,危険性等についての説明が十分に行われるように配慮すべき義務を有するものというべきである。しかし,チーム医療の総責任者は,上記説明を常に自ら行わなければならないものではなく,手術に至るまで患者の診療に当たってきた主治医が上記説明をするのに十分な知識,経験を有している場合には,主治医に上記説明をゆだね,自らは必要に応じて主治医を指導,監督するにとどめることも許されるものと解される。そうすると,チーム医療の総責任者は,主治医の説明が十分なものであれば,自ら説明しなかったことを理由に説明義務違反の不法行為責任を負うことはないというべきである。また,主治医の上記説明が不十分なものであったとしても,当該主治医が上記説明をするのに十分な知識,経験を有し,チーム医療の総責任者が必要に応じて当該主治医を指導,監督していた場合には,同総責任者は説明義務違反の不法行為責任を負わないというべきである。このことは,チーム医療の総責任者が手術の執刀者であったとしても,変わるところはない。
 これを本件についてみると,前記事実関係によれば,上告人は自らB又はその家族に対し,本件手術の必要性,内容,危険性等についての説明をしたことはなかったが,主治医であるC医師が上記説明をしたというのであるから,C医師の説明が十分なものであれば,上告人が説明義務違反の不法行為責任を負うことはないし,C医師の説明が不十分なものであったとしても,C医師が上記説明をするのに十分な知識,経験を有し,上告人が必要に応じてC医師を指導,監督していた場合には,上告人は説明義務違反の不法行為責任を負わないというべきである。ところが,原審は,C医師の具体的な説明内容,知識,経験,C医師に対する上告人の指導,監督の内容等について審理,判断することなく,上告人が自らBの大動脈壁のぜい弱性について説明したことがなかったというだけで上告人の説明義務違反を理由とする不法行為責任を認めたものであるから,原審の判断には法令の解釈を誤った違法があり,この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。


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2007.10.22

薬害C型肝炎418例リスト問題で田辺三菱製薬報告

 舛添厚生労働大臣は10月22日午後、田辺三菱製薬の葉山夏樹社長を呼び、対応を指示しました。
 田辺三菱製薬が厚生労働省に報告した内容は、フィブリノゲンを投与された患者のフルネーム197名分を把握していたという驚くべきものでした。
 以下は、報告書の一部です。 「患者様へ」という言葉が白々しく感じられます。
 今後いかに迅速に対応するのか、どのような対応を取ったのか、どのような反応・成果があったのか、田辺三菱製薬は直ちに情報公開すべきでしょう。


 418例の患者様への呼びかけについて

 三菱ウエルファー株式会社が平成14年7月16日付けおよび平成14年8月9日付け報告書において報告したフィブリノゲン製剤投与後に発生した肝炎等の報告例418例について、氏名や住所に関して弊社が保有している状況の明細は、以下のとおりであります。
 氏名のフルネーム 197名
 イニシャル等    170名

 医療機関の協力も得て、418例に対して調査を行い、上記症例と同一性が確認された患者様に対して、フィブリノゲン投与の事実を告げた上で、現在治療または検診を受けておられない方につきましては、肝炎の検査等を受けられるようお勧めする所存であります。なお調査にあたりましては医療機関より提供された感染症報告であり、患者様の個人情報が含まれていることに鑑み、患者様のプライバシーに最大限の配慮をしつつ実施いたします。

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2007.10.20

C型肝炎、418名の患者リスト

071020ckan418 国が感染者リストを倉庫に放置!

 国会で追及され、倉庫を調べると資料が出てきたと大騒ぎ・・・・薬害HIVのときにも当時の菅直人厚生労働大臣が厚生省官僚に徹底調査を指示したところ、ないと言ってきた資料が発見された。
 今回も全く同じ構造だ。厚生労働省が昨日10月20日、18名の患者イニシャル、病院名、医者の名前が記載されたリストが厚生労働省の倉庫から発見されたと発表した。

 厚労省が2002年の段階で感染者を特定するリストを持っていながら、当事者に知らせず放置したことに他ならない。厚労省は、22日に田辺三菱製薬の社長に対して、感染者への告知などを指示する方針らしいが遅きに失した対応といわざるを得ない。

 厚労省内で個人情報入り資料見つかる (TBS動画配信)

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2004.08.20

カルテとプライバシー

 「最近、裁判所からカルテの送付依頼が多くなったけど、患者さんの同意書を一緒に送ってくれないから困るんですよね。法律関係者のカルテに対する意識は低すぎませんかね。」昨日の薬害オンブズパースン例会に出席した薬剤師さんから投げかけられた疑問です。
 医療過誤事件に限らず、交通事故事件などにおいて、被告側が裁判所を通じて病院からカルテを取り寄せることがあります。その際、被害者である患者さんの同意書を添付しないことが多いため、医療機関が苦慮しているというのです。裁判所、原告、被告の代理人は同意しているのでしょうが、患者本人の明示の同意を取り付けていないことに原因があります。

 アメリカでは、2003年4月に施行された医療情報保護法(HIPAAプライバシー・ルール)が、アメリカの医療現場に大きな影響を及ぼしているといいます(ジュリスト・1273号・174頁「医療情報保護法(HIPAAプライバシー・ルール)の影響」樋口範雄)。この論考では、ルール違反が争われたアメリカの判例が紹介されています。
 レーザー手術の医療過誤で、別のX医師の手術を受ける結果になってしまったという裁判。病院側弁護士が、患者に無断でX医師に接触し、患者の診療情報を含めて話を聞き出します。その上で、レーザー手術の失敗によってX医師の手術が必要になったものではないと立証するため、X医師を証人申請したのです。
 被告弁護士がX医師に接触して無断で患者個人情報を聞き出すのは、HIPAAルール違反という異議が原告から出されました。
 裁判所は、最終的に、HIPAAルール違反を認めましたが、違反の制裁としては、X医師と話し合った内容を事前に患者側に開示するように命じるにとどまり、X医師の証人申請を却下するまでには至りませんでした。

 日本の裁判所におけるカルテ送付の問題も、このアメリカの裁判の問題も、事前にきちんと患者の同意を取り付ける手続きを取っていれば、何の問題もなかったケースと思われます。審理のために、カルテを取り寄せたり、X医師に証言してもらう必要性は認められるからです。患者さんの同意を取り付けないこと自体が、プライバシー侵害になることを、法律家だからこそきちんと認識する必要があります。

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2004.07.01

疲労蓄積度自己診断チェックリスト

 厚生労働省が、6月30日、「労働者の疲労蓄積度チェックリスト」を公開しました
 「労働者自身も自らの疲労度を把握・自覚し、積極的に自己の健康管理を行うことも大切である。このため、「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト作成委員会」(座長:櫻井 治彦 慶應義塾大学名誉教授)を設置し、労働者の疲労の蓄積を簡便に診断できるチェックリストの検討を行い、昨年その試行版を公表したところである。」

   チェックリスト

 ちなみに、私は、自覚症状10点(Ⅱ)、勤務状況の評価6点(D)で、仕事負担度は、「高いと考えられる」だそうです。

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2004.05.28

医療過誤で模擬裁判

千葉地裁や弁護士が関与する「県医事関係裁判運営委員会」において、5月25日には、専門家が訴訟に参加する「専門委員制度」を取り入れた初めての模擬裁判を開いたそうです。
専門委員制度は4月に民事訴訟法の一部改正で導入されたものですが、長所・短所を十分理解した上での利用がのぞまれます。
医療過誤の場合に、裁判所が安易に医師たる専門員の意見にのっかると、4割近くまであがった「患者側勝訴率」は下がるのではないでしょうか。知り合いの医師とフランクに話すと、「今の医療裁判はおかしい」「患者がかちすぎ」「インフォームドコンセントなんて現場では意味がない」など、いまだそのような感覚が抜けていないことを強く感じます。

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2004.05.26

医療過誤倍増、審理期間は微減

医療過誤の裁判は年間1000件に迫る勢い。一方、審理期間は2年弱となっています。専門訴訟の一つとして最高裁が正面から取り組む姿勢を見せることと、弁護士の方も、専門家としてのスキルアップ努力を行っていることがうまく作用している感がします。

医療問題弁護団 医療事故研究会 医療事故情報センター 札幌医療事故問題研究会
九州山口医療問題研究会

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